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一般の方へ
1.足壊疸について
  
足に傷ができた場合、動脈血流障害のない場合は適切な処置を行えば自然治癒力が働き直って行きます。
ところが動脈血流障害のある場合はどのような処置を行っても治りません(難治性)。血流障害を伴う傷はかなり痛むのが一般的です。
足の傷を見た場合、まず動脈血流障害があるかないかを見ることが大変重要になります。しかし、足に血流障害があるかどうかの見極めのできる医師はかなり限られているのが実情です。
足壊疸について
「皮膚科で魚の目の切除を受けたが、その傷が治らずとても痛いので見てほしい。」「足の一部が壊死してきたので整形の先生に壊死部を切除してもらったが、その傷が治らずに徐々に大きくなりとても痛いので、見てほしい。」これらは実際にあった話です。
もしその時の皮膚科の先生が血流障害に気づいていたら、「魚の目は取らないといけないが、まず血流障害の改善を行う必要がある」と考えていたはずです。壊死部を切除する整形外科医は「壊死しているのは尖端だけだが壊死していない組織に血流障害はないのか、もし血流障害があるなら壊死部切除は血流改善の後行うのが望ましい。あるいは壊死部は切除するにしても間髪を入れず血流改善の必要がある」と考えたはずです。

血流障害のことを虚血と言います。この言葉は足に限られた言葉ではありません。心臓に虚血のある場合は心筋虚血、脳に虚血のある場合は脳虚血、腸は腸管虚血と呼ばれます。
どの臓器においても虚血は組織壊死につながるので恐ろしい病態です。
足に虚血性の創傷が発生した場合、必ずと言っていいほど創部には細菌が繁殖して感染を起こしてきます。その後の経過は感染のひどさが左右すると言って過言ではありません。感染が軽傷の場合は難治性創傷として経過しますが、重症の感染は状況を悪化させます。細菌は足の腱に沿って上行する傾向があり、重症感染は組織に障害を与え、動脈微小構造を破壊し壊死を広げます。
高熱の出現は敗血症に陥る兆候です。この段階になりますと命の危険性と大切断の必要性が出てくるので適切な処置を急ぎます。
一方で傷が小さく感染合併が軽微な症例は血流を改善すると痛みは血流改善とともに消え、創傷はすみやかに治癒に至ります。
2.救肢ネットの目的
  
(1)適切な治療を受けることができないで経過されている患者様に直接呼びかけることで適切な治療を受けるきっかけになること。
(2)血流障害に興味のある先生方、あるいは医療従事者の方との連携を深めることでより多くの患者様に適切な治療を広めること。
(3)専門治療を行われている先生方、医療従事者の方々との情報交換の場となること。
3.血流改善の方法について
  
ほとんどの虚血は動脈硬化が原因で起こって来ます。動脈硬化とは血管の老化現象であり、狭窄や閉塞を来たした動脈のその場所は寿命を迎えているということです。
もともとはその名の通り閉塞性動脈硬化症(Arterio Sclesosis Obliterans:ASO)と呼ばれていましたが、現在では下肢閉塞性動脈疾患(Lower Extremity Arterial Disease:LEAD)と呼ばれるようになりました。
血流改善の方法について
虚血の改善に十分な効果と即時性が期待できるのは、直接的血行再建と呼ばれるカテーテル治療{血管内治療(endo vascular therapy:EVT)}とバイパス手術です。
その他にも高圧酸素治療、LDL apheresis、薬物療法、血管新生治療などがありますが、直接的血行再建術ほどの効果と即時性は望めず補助療法として位置づけられています。
重症虚血を引き起こす動脈閉塞パターンはいくつかありますが、足壊疸の原因となるのは下腿3分枝病変がもっとも多く見られます。
下肢の付け根から始まる大腿動脈は、膝窩動脈を経て膝下で3本の動脈に分かれます。脛骨の前を行く前脛骨ー足背動脈、脛骨の後ろを行く後脛骨ー足底動脈、脛骨裏面を走行して足首で終わる腓骨動脈の3本です。3本ともに閉塞性病変を抱えた状態が下腿3分枝病変です。
つまり足壊痛の血流改善、足部の血流改善には下腿3分枝病変への介入は避けては通れないということになります。

ここ10年来、国内外を問わずバイパスとEVTの優劣を論ずる論文が多く発表されて来ましたが、ここに来てどちらが良いかは各症例において異なり、どちらであっても下腿動脈に介入を行い、足の血流を改善させることが重要との声が聞かれるようになっています。
それぞれにメリット、デメリットがあるので一様に2つの方法論の優劣は論じることはできないと考えられます。国内ではバイパスを行っている施設より、EVTを行っている施設がはるかに多いのが実情です。

足壊疽という言葉

足壊疽とは足に難治性創傷が発生していることを指す言葉ですが、難治性となる原因としては足の血流不足(虚血)と糖尿病が挙げられます。
傷の感染と慢性外傷(靴擦れなど)、虚血が悪化を助長します。虚血がなく糖尿病のある症例は糖尿病性足壊疽と呼ばれますが、実際は虚血と糖尿病の合併する症例が多く見られます。
糖尿病が動脈閉塞の原因となるからです。2022年の末梢動脈疾患治療ガイドラインから虚血のある足に難治性創傷が発生した状態を包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb threatening ischemia : CLTI)と呼ばれることになりました。
CLTIでは糖尿病性足壊疽より救肢のためには血流改善の成功が必須となるため、虚血のない糖尿病足壊疽より大切断のリスクが高いということになります。
また、創傷の発生のないものの重症虚血状態にあることはcritical limb ischemia : CLIと呼ばれ、CLTIとは区別されています。包括的高度慢性下肢虚血という名前は長いため、文中では足壊疽という言葉を使用しています。

北出病院で実施している項目

・バイパス術
・EVT
・高圧酸素療法
・エピフィックス 等

EVTとバイパス

EVTとバイパスを分かりやすく解説させていただきます。

どちらも下肢血流を決定的に改善する治療法で、他の治療はこの2つには及びません。

EVTはendovascular treatment(血管内治療)の略で、バルーンカテーテルを使って動脈の狭い所、詰まっているところを広げる治療を指します。

ざっくり例えますとEVTは既存の道(血流路)の整地作業をバルーンで行う治療で、バイパスは道なきところに新たな道(血流路)を作る治療です。

どちらも到着地に良好な血管が残っていないと治療はうまく行きません。

どちらか随意に選択できるわけではなくEVT向きの病変、バイパス向きの病変があり、EVTでしか治療できない、バイパスでしか治療できないということが多々あります。

EVTは侵襲度の軽い治療ですが再発が多い、バイパスは重い治療ですが耐久性が良い、血流改善の力がより強い、などの特徴があります。

軽い治療のEVTが優先されがちですが、様々な条件を考慮して最も適した選択をします。

膝上まではEVTで膝下からはバイパスでというハイブリッド治療もよく行われる選択です。

なお膝下でのバイパスは人工血管での開存は望めず、自分の下肢の静脈(主に大伏在静脈)を用いて行います(静脈グラフト)。

バイパスの成績はこの静脈グラフトの良否にも大きく依存します。

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